前日から降り続く雨。今回行われる音楽祭は岩木山4合目にあるブナ林、通称『巨木の森』で行われる野外ライブ。たとえ当日晴れたとしてもこうも雨が降り続くと現場の足元の悪さが心配される。結局、当日も雨。先方より早朝に連絡をいただくが、やはり会場は常盤野小中学校の体育館となった。大自然の中でのびのびと歌えることをメンバーもスタッフも楽しみにしていただけに正直がっかりしたが、何よりも来てくださるお客さまの安全が第一だ。みんなの気持ちを切り替える。野外のステージではできなかったことをやろう。必ずあるはずだ。
9:30会場に到着。そこは私たちが想像していた以上に立派な、まるで博物館のような近代的な校舎だった。どこの出場グループも巨木の森に合わせた時間で行動していたので時間に余裕が出たらしく、リハーサルの時間が早まる。今回のステージはつがる、ジョナ、金星という3人では初のステージ。もちろん最近ではおなじみとなった「ケノシル」もいっしょだ。立ち位置やモニターの具合などを詳しくチェックしながらリハーサルを終えた。
そして今日6月20日は以前から告知していた7枚目のシングル「焼きりんご」の発売日である。会場脇に設けれたブースには真新しいCDが並ぶ。今回も前回同様のプレス版。終わったあと、このCDをたくさんの人が手に取ってくれることを祈るだけだ。
11:30控え室で昼食をとりながらメンバーでの細かい打ち合わせが続く。外は相変わらずの雨。気温が高いせいか周囲の山々はあっと今に霧に包まれてしまった。山の天気は変わりやすい。だからこそ自然の醍醐味が味わえるのかもしれない。
昼食をとってからもMCの最終チェックが続く。今日のイベントはなんとしても成功させたい。この天気に会場変更、しかもステージもつまらないと言われたら来てくださった方々にあまりにも申し訳なさ過ぎる。しかし、つがるの体調が思わしくない。来週からテストを控え、勉強をしながら練習も欠かさずやり、そのせいで風邪を引いたらしい。38度の熱を押してステージに望む。そんなつがるに無理をさせまいとフォローする金星とジョナ。3人が力を合わせないといいステージにはならない。しかもりんご娘.の出番は一番最後、トリである。他の錚々たる皆様方を差し置いてのこの出番も彼女たちのプレッシャーになっていることだろう。
12:30本番スタート。会場には券売数のおよそ6割ほどのお客様しかいない。この天気だ。しかたがない。まずは2月に一緒にライブを行った匠バンドだ。さすが地元岩木町での活動が多いだけにお客さんの乗りもよく、楽しいライブだった。
そのあとも弘前大学スティールパン部の皆さんの演奏、花田一蔵さんと岩木義夫さんの三味線・民謡と続いた。時々笑いも飛び出し、なんともなごやかな時間が流れていった。
14:15ついにりんご娘.の出番となる。いつになく緊張した面持ちの3人。「どうしよう。緊張してます。」今までのイベントの中ではじめて聞いたつがるの弱音だった。「大丈夫。やってきたことやればいいだけだから。いつもどおり、楽しく、ね。」「はい。」3人の声が明るく揃った。メンバー同士で気合を入れ、ステージへ。自然にいつものような笑顔が戻った。その3人を送りだし、CD販売ブースに行くと、後ろにある窓の外は雨が上がっていた。さっきまでずっとやむことなく降り続いていた雨が、である。ステージには司会者に促された3人が登場する。薄暗闇の中、赤いりんごTシャツと白いパンツがひときわ目を引いた。
静かな3本のギターの音色が体育館に響く。久しぶりに歌う「YOU」は今回初めてアコースティックという形にアレンジされた。ジョナ、つがる、金星とソロでつないでいく。しかしこのアレンジは繰り返しとなるコーラス部分から3部に分かれている。音をとるのがかなり難しい。コーラスを歌うジョナと金星は練習のときもなかなか音をとることができず、本番直前まで音あわせをしていた。その甲斐もあってか大きなミスも無く歌い終えた。
つがるがここで簡単にあいさつをする。アコースティックの流れでもう1曲「エアポート」へと進む。このアレンジは4月4日の「りんご娘.と歌う会」ではじめて歌われたものだが、あの日来てくださったお客さんをはじめ、メンバー、スタッフの間でも大変評判がよかった。もともと明るい前向きな曲だが、このアレンジには手拍子が非常によくあう。会場の皆さんにも手拍子をお願いし、手拍子を通して会場がひとつになった、そんな感じだった。
ここでいつもの自己紹介。「それはどうかな?」というバンドメンバーの寒い突っ込みもありながらここから先はアコースティックに変わってバンドでの演奏。セッティング中も上手にMCをつないだ。
当初、ここでは「りんごの唄」と「津軽のふるさと」の2曲を予定していたが、時間的な都合もあり、「りんごの唄」のみとなった。この曲も原曲とはまったく違うアレンジのため、聞く人には新鮮に映ったらしく、一番聞き入ってもらえたようだ。前回のつがるとジョナのバージョンに金星が加わり、振りも3人でアレンジしなおしたらしく、決めのポーズもしっかり決まった。
続く「LOVE&SOLDIER」津軽弁が登場するこの歌は普段津軽弁を使うものにとってはとてもおもしろく聞こえるらしく、会場のあちらこちらでひそひそと笑いながら話をする姿が目に付いた。
続くMCのリーダーは金星。自分たちがレギュラーで出演している「江奈滋家の食卓」について触れ、見たことがある人に挙手を願う。ここでは半数以上の人が知っていたようで、メンバーも私たちスタッフも正直驚いた。気をよくしたのかテンションがあがる金星。自分たちの新曲「焼きりんご」についてPRする。このとき、「食べるほうの焼きりんごと間違えたお客さんがいた」という話になった。これがかなり執拗だった。笑い話としてさらっと流すくらいにしてほしかった。聞いていてハラハラした1コマだった。イベント終了後に私が彼女に注意したことはいうまでもない。
残す2曲は今回発売となるCDに収録された曲だ。まずは「りんごのキモチ」から。そしてラスト「焼きりんご」。この曲の前奏部分で「この曲で最後になります!」とさらに観客に手拍子をしてもらえるようにアピールする。つがるがMCをする間金星とジョナの2人はマイクを置き、観客席のすぐそばで手拍子をした。その甲斐あってか観客のほとんどの方が手拍子をしてくれた。しかしここでも大きなミス。なんと肝心の曲タイトルをここで誰も言わなかった。あとでわかったことだが、このときすでにつがるの集中力は切れ、自分が何を言ってるのかさえわからなかったという。当日の彼女たちの体調を考え、MCの担当者を変えなかったスタッフサイドのミスだと言えるだろう。しかし曲に入ると会場の空気が変わった。金星の気持ちよく伸びるボーカルが会場を包む。この曲のテイストがこの日、匠バンドを目当てに来ていたお客さんの心を捉えたらしく、体を揺らしながらうれしそうに手拍子をする中年層の夫婦もいた。体育館だからできることを一つ、克服できた瞬間だった。
本当はアンコールも用意していたのだが、予定の時間も過ぎ、あまり長くなっては会場のお客さんが帰るという判断からアンコールは行なわなかった。
ステージ終了後は会場が撤収作業を行なう中でのCD販売会となった。2月に匠バンドとライブを行なった際にCDを買ってくださった方や弘前大学のスティルドラムを応援にきていた大学生など、新しいファンを前に笑顔の3人。買ってくださる人がいないのではと心配していただけにほっとした1コマだった。
この日は全体的に曲そのものの乱れがほとんど無く、終始安定した歌声を保っていた3人。これは今後も続けてもらわなければならない点だ。だが、やはりMCは何度も繰り返し練習をし、確認をしていたわりには目に付くところが多かったのも事実。全体の、というより個人レベルでの問題のようだ。次回は単独ライブ。気持ちを引き締めて望めるようにマインドをコントロールしてもらいたい。
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